『ドラキュラ』関連書誌

ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』に関する参考文献。随時更新。

ドラキュラの世紀末―ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究 (Liberal Arts)

ドラキュラの世紀末―ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究 (Liberal Arts)

新歴史主義的な手法によるヴィクトリア朝世紀末文化研究の代表的な著作。全体的なテーマとして『ドラキュラ』における外国恐怖症を掲げ、各章では個別に「フランス恐怖」、「アメリカ恐怖」、「ユダヤ人恐怖」、「混血恐怖」、「コレラ恐怖」、「瘴気&細菌恐怖」を扱っている。新聞や雑誌などの言説群と小説テクストとの間テクスト性を重視した(新)歴史主義的な手法を駆使した本論は見事。


深淵の旅人たち―ワイルドとF.M.フォードを中心に

深淵の旅人たち―ワイルドとF.M.フォードを中心に

第1部「一九世紀末イギリスのゴシック・ワールド」に『ドラキュラ』の分析が収められている。世紀末の「不安」や「境界侵犯」に注目するという点では『ドラキュラの世紀末』と同じテーマを扱っているが、より「深淵」に肉薄する各キャラクターごとの考察が加えられ、さらにオスカー・ワイルドやロバート・スティーヴンソンら世紀末文学との接点が模索されている。


口唇的セクシュアリティへ。


ドラキュラの遺言―ソフトウェアなど存在しない

ドラキュラの遺言―ソフトウェアなど存在しない

ジャック・ラカンセミネールがテープへと録音され、タイプ原稿へと機械的転写を遂げたように、小説『ドラキュラ』もまたタイプライターや蓄音機によって「声」が記録されたその成果物であるとみなすことができる。この小説が迫るのはタイプライターという機械的ディスクール処理か吸血鬼というヒステリー化かという二者択一である。そして、我々が目にするテクストとは、「女性ジャーナリスト」を目指すデータ解読者ことミナ・ハーカーの手によってタイプされた原稿に他ならない。

ストーカーの『ドラキュラ』は吸血鬼小説などではなく、われわれの官僚制化(オフィスによる支配の貫徹)についての案内書なのであろう。それを恐怖小説と呼ぶことも自由である(44)