『ユリイカ』(2010. 09)

ユリイカ2010年9月号 特集=10年代の日本文化のゆくえ ポストゼロ年代のサバイバル

ユリイカ2010年9月号 特集=10年代の日本文化のゆくえ ポストゼロ年代のサバイバル

池田剛介氏の「マイクロマテリアルな環世界変容にむけて」が興味深かった。余談だが、「ある環世界から別の環世界へと移動する「変態(metamorphosis)」としての進化」は『借り暮らしのアリエッティ』を想起させる。あの映画が描こうとしていたミクロな知覚の映像世界――水の表面張力、昆虫のスケール感、ヒューマン・スケールの異化――とはまさに環世界変容と呼ぶにふさわしい。しかも、アリエッティというキャラクターもまたラス・メニーナスの絵画に描かれたように「小人」という設定だった。
また、ユクスキュルは『生物から見た世界』の中で子どもの知覚世界のことを「魔術的環世界」と呼んでいる。それは単なる無垢な視線ではなく、驚異を発見することができる魔術的な視線である。認知行為に「センス・オブ・ワンダー」が宿るような映像体験こそが10年代の文化を切り開くことになる可能性は大きい。