『チャンネルはいつもアニメ』

チャンネルはいつもアニメ―ゼロ年代アニメ時評

チャンネルはいつもアニメ―ゼロ年代アニメ時評

商業アニメ誌が主に情報誌とヴィジュアル誌(+おまけ商品)としての機能しか担わなくなって久しい。今や商業誌に関してアニメファンの間で話題に登るのは版権絵やグッズの話が中心で、アニメ時評などは映画誌以上に機能不全に陥っているとすら言える。そんな現状の中、著者の藤津亮太氏は2004年末から2010年5月まで『Newtype』と『アニメージュ』という大手アニメ誌で連載を続け、今回、その原稿が書籍化された。

「まえがき」で明らかにされている評論を書くにあたっての三つの原則は同意できる部分も多い。「作り手の名前に安易に頼って語らないこと」、「安易な辛口評を書かないこと」、「視聴者の視線から書くこと」。本文の原稿の質はまちまちだが、個人的には2008年前後に書かれた『true tears』、『紅』、『かんなぎ』などの時評は見事だと思う。

また、表紙は明らかにダサい。しかし、前時代的なリモコンにアニメチャンネルが並ぶその画像は、ネット配信へとシフトしていく時代の趨勢にあって「TVのザッピングに相当する不特定多数が偶然見るシステムの整備」が必要だと説く著者の意図を表現していることだけは確かだろう。