フランス心霊科学

フランス「心霊科学」考―宗教と科学のフロンティア

フランス「心霊科学」考―宗教と科学のフロンティア

心霊科学は自演の似非科学ではない。科学革命や「聖俗革命」と呼ばれる宗教から科学へという近代のパラダイムの中で、実証主義を継承したど真ん中の科学こそが心霊科学であったことを再確認することになる本。
序章から一章で近代のパラダイムの地ならしをしてくれるのが助かる。単なる心霊研究の発展史にとどまらず、バルザックなどの小説空間論やユゴーのナラトロジーを引き合いにだし、さらにはコントの実証主義を丁寧に解説するなど、巨視的な視点で十九世紀の区画整備がなされている。 二章がユゴーで、これは前著『ヴィクトル・ユゴーと降霊術』の続編として読める内容。見所はユゴーがテーブル・ターニングをテキストの自動生成に用いていたという驚きと、その記録魔ユゴーが残した資料を分析する著者の手並み。三章がアラン・カルデックのスピリチスム、四章が天文学者という表の顔とは別に、心霊研究家としての裏の顔を持つカミーユ・フラマリヨン。カバラグノーシス主義など、多少フォローできない所も多いが、皆がマジメに科学に取り組んでいたことだけは理解できる。
イギリスの場合でも、すでにジャネット・オッペンハイムの研究が翻訳されているし、イギリス心霊協会の会員にはアルフレッド・テニスンの名前があったり、心霊科学はコナン・ドイルもぞっこんだった分野でもあったりと、こちらの脈も太いのは確実。