ロンドン版シム・シティは火の用心

Lit & Cult Spaces Restoratn London

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十七〜十八世紀都市論の第一人者シンシア・ウォールの代表作。原著は1998年。言うまでもなく良書。
1666年の大火を境にロンドンにおける地図の概念が大きく変化した。大火以前の地図は言わば3Dの鳥瞰図が基本だったが、大火後に必要とされたのは住所ごとに区画された2D地図。火事でロンドン中心部の4/5が消失した結果、その再建のためにはまず住所や土地所有権の確定線を定める必要に迫られ、統治の技術として都市の情報を新しく整理する必要が生じたという。
この大火を分水嶺とする地図概念のシフトが文学における都市表象にも大きく影響を与えたに違いない。デフォーの『ペスト年代記』などは十八世紀初頭に書かれたテクストでありつつも、大火以前の1665年のロンドンを描いているということになるので、新旧ロンドンの表象を股にかけているとも言える。