近代風景画

明るい窓:風景表現の近代

明るい窓:風景表現の近代

第一章は風景画の誕生の経緯をイタリア(理想的風景画)、オランダ(自然主義的風景画)、フランス(アカデミーの風景画論争)とに分けて概説。各地域における宗教改革の進捗状況が風景画の隆盛に影響しているという点は興味深い。第二章は江戸後期の日本。知らないことばかりで滅入るが、司馬江漢や亜欧堂田善の風景画は「漫画的」だと思う。
第三章、英国の風景画。国内に所蔵されている英国風景画家の絵画(コンスタブル、ジョン・マーチン、ターナーなど)がこんなにあるとは知らず、栃木県立美術館郡山市立美術館の英国風景画コレクションはぜひ見てみたい。
第四章はオリエントへの関心と写真の発達。写真による戦争の記録が大規模にはじまったのはクリミア戦争以後。また、商業写真の只中にいたジェームズ・ロバートソンとフェリックス・ベアトがエルサレムの写真を撮影した一八五七年はメルヴィルエルサレムを訪問したのと同じ年であるとのこと。風景画というジャンルが眺望詩や地誌詩と密接に関係することは言うまでもないので、これからも注視すべき分野。